膵臓の負担が増えてしまう
糖尿病食を毎日食べていたら病状が悪くなってしまった…という場合も。
現在、日本の病医院で指導されている糖尿病食は、低カロリー・低脂肪食が基本です。この従来の糖尿病食は、全体のカロリー摂取量の55~60% を炭水化物(糖質)から補うように糖尿病治療ガイドラインですすめており、高糖質の食事になっています。
1日の摂取カロリーを1500キロカロリーにして炭水化物からのカロリー摂取を60% にすると、1日の糖質の摂取量は225グラムとなります。これを朝・昼・晩の3食で均等に分けたとしても1食あたりの糖質の摂取量は75グラムになります。
2型糖尿病の方は糖質を1グラムとると血糖値が3ミリグラム上昇し、しかも下がりにくくなっています。そのため食前の血糖値は325ミリグラムまで上昇し、長時間、高血糖の状態が続くくことになります。
一般に、血糖値が180ミリグラムを超えると血管の内壁が傷つき、その状態が続くと深刻な合併症が起こると考えられています。ですから、従来の糖尿病食ではすい臓の負担は減らせず酷使しっづけることになり、糖尿病の悪化や合併症も防ぐことができないのです。
また、低カロリーの糖尿病食はすぐにおなかがすいてしまうばかりか、カロリー計算もめんどうです。そのうえ、主食のほか、根菜類の煮物や魚の甘露煮といった低カロリーのメニューでも、糖質が多く含まれているものが少なくないので血糖値を下げる効果は期待できないのです。
こうしたことから、糖尿病の予防や改善のためには、糖質を制限する食事を実行すべきなのです。糖尿病の予防のためなら1食当たり糖質量を40グラム以下、糖尿病になった人なら糖質量を10グラム以下に抑えるのが理想です。
糖質をとらない「糖質制限食」の効果と安全性を確認するため、検査を実施しました。1食当たり糖質が5グラム未満の超糖質制限食を35.1~43.6ヶ月間続けていた16人の協力者を対象に、健康状態を精密に調べたものです。
その結果、参加者の血糖値・肝機能・腎機能・電解質・尿検査・呼気ガス分析、血液ガス分析は、いずれも全員が正常範囲に保たれました。しかも、参加者のうち、2型糖尿病の人は、空腹時血糖値もヘモグロビンA1Cの値も正常範囲に改善しました。
さらに、肥満の人は数ヶ月で適正体重になり、脂肪肝の人も数カ月で肝機能値が正常範囲になったのです。
血液中および尿中のケトン体は普通食の人の約10倍になっていましたが、呼気ガス分析でどの栄養素が消費されたかを調べたところ、糖の代わりにケトン体によってエネルギーがまかなわれていたことがわかりました。この状態では、糖新生(肝臓で糖が合成されること)によって血糖値が一定に保たれるため、高血糖や低血糖が起こる心配はありません。
糖質制限食は、健康を損なわずに糖尿病を改善に導ける、極めて有効な食事法といえます。ぜひ安心して糖質制限食を実行してほしいと思います。